多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、20〜30代の女性に多くみられる疾患です。
卵巣内で男性ホルモンの濃度が高くなり、排卵が起こりにくくなるのが特徴です。
排卵しなかった卵胞は卵巣に残ってしまい、超音波検査でみると正常の卵巣よりも多くの卵胞がみえます。
排卵障害のため多くは不妊症となります。
完全に不妊症ではなくても“妊娠しにくい体質”であることは間違いありません。
多嚢胞性卵巣症候群の原因は一つではありません。
また原因が人によっても異なります。
そのため同じPCOSと診断されていても誰にでも同じ治療をするわけではなく、患者さんによってその人に合わせた専門的な治療を選択する必要があります。
これがPCOSの治療が難しくなる理由です。
正常な排卵を起こすため排卵誘発剤を使うことが一般的な治療となります。
ここで注意しなければならないことはPCOSでは排卵誘発剤の副作用が出やすいということです。単に排卵すればいいわけではなく副作用を避けることも重要になります。
副作用を回避するため誘発剤の量が少ないと排卵が起こらないことがあります。
逆に作用が強いと数多くの排卵が起こり、双子などの多胎妊娠のリスクが増します。
また、PCOSでは排卵誘発剤により、多くの卵胞が発育して卵巣が大きく腫れ上がり、お腹や胸に水がたまることがあります。
これを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といい、重症化すると入院が必要になることがあります。
多胎妊娠やOHSSなどの副作用を避けるため、排卵誘発剤は経過を見ながら種類や量を細かく調整する必要があります。
適量が事前に分からないため、通常は以下の手順で慎重に進めます。
①まずはクロミフェンやレトロゾールなどの内服薬から開始します(クロミフェン内服による排卵率は約40%です)。
②内服薬で効果が不十分な場合は、FSH製剤などの注射薬を用います。
③投与量を増やさなければ排卵が起こらないような重症の排卵障害の場合は、多胎妊娠やOHSSを回避するために体外受精を行います。
排卵誘発剤で妊娠しない場合、多胎妊娠やOHSSを予防できない場合は体外受精となります。
体外受精では多くの卵子を採卵しても受精卵を1個だけ子宮内に移植すれば多胎は防ぐことが出来ます。
またOHSSを回避して安全に治療することも可能です。
多嚢胞性卵巣症候群の体外受精ではそうした合併症予防の万全の対策をしつつ、患者さんごとに細かく薬剤を調整し、質の良い治療をおこなうことが大切になります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者さんは副作用の関係で、生理が順調な方に比べ、少し早めの段階で体外受精を勧められることが多くあります。
この疾患をもつ方は比較的年齢が若いこともあり、一人ひとりの体質に合わせた体外受精を行うことで、80%以上の方が妊娠可能です。
少し時間はかかるかもしれませんが、根気よく治療を続けていくことが大切です。
多嚢胞性卵巣症候群(OHSS)は、肥満が原因となる場合もあります。
また、PCOSに限らず、肥満は卵子の発育や状態を損ない、妊娠率を大幅に低下させることが知られています。
そのため、肥満がある場合は減量が効果的です。適切にダイエットをすることで、排卵が正常化することも多く見られます。
しかし、「マンジャロ」などの薬物によるダイエットは妊娠や胎児に悪影響を及ぼすリスクがあります。
不妊治療の方針については、自己判断せず、事前に多嚢胞性卵巣症候群を専門とする不妊治療施設で相談するのがよいでしょう。
最初に述べたように多嚢胞性卵巣症候群は患者さんごとに治療法を考えなければならない特徴があります。
排卵誘発剤が標準的治療であることは間違いありません。ただし、副作用を避けるために専門医による薬の選択や量の調整はとても重要になります。
思うように治療の効果が得られない場合は早めに体外受精を行うのが良いでしょう。
まずは一般不妊治療の排卵誘発から始めることになりますが、体外受精が必要となることも多いので「体外受精」を実施している不妊専門クリニックでの治療が良いと思います。
特にPCOSの体外受精の治療経験が豊富で、副作用予防対策を行っている専門的なクリニックで治療を受けることをお勧めします。